基本フォームを身につける
砂利道で車体を安定させる一番の鍵は「スタンディング時の重心」と「視線の置き方」です。
ステップの中心に土踏まずを載せ、膝を軽く曲げて腰を前後に自在に動かせる準備を整えます。前傾が強すぎると前輪に過剰荷重が掛かり、石を踏んだ瞬間にハンドルが弾かれやすくなります。逆に上体を起こしすぎると後輪が沈み込み、前輪の舵が効きにくくなるので、背筋を伸ばしたまま胸をタンクに近づける「く」の字姿勢がちょうど良いバランスです。腕はハンドルを押さえつけず、肘を外へ張ってショックを受け流すスペースを確保し、指先でスロットルとクラッチを繊細にコントロールできる余裕を持たせます。
視線は路面直下ではなく進行方向十メートル先へ送り、凸凹の全体像を脳が無意識に捉えられるようにすることで、急な石の山や浅い轍にも身体が自然に対応できるようになります。慣れないうちは舗装路で同じフォームを再現し、車体の揺れに合わせて膝と足首で衝撃を吸収する感覚を体に覚え込ませると、本番の林道で驚くほど安定感が増します。
低速ギアで作る安定トラクション
砂利道ではトラクションの安定こそが転倒防止の要です。ギアは一段低めを選び、エンジン回転をやや高めに保つことで、アクセル微調整に対する車体の反応が滑らかになります。回転数を保ちつつスロットル開度をわずかに絞るとエンジンブレーキが穏やかに作用し、フロント荷重を維持しながら後輪が空転しにくくなります。
一方で高すぎるギアでトコトコ走ると、ちょっとした石に乗り上げた瞬間にエンストしたり、クラッチを多用して疲労が溜まりやすい原因になります。クラッチは半クラッチ域を長く使わず、必要なときにだけ短く滑らせるのがコツです。速度は歩くよりやや速い十〜十五キロを基準に、路面の荒れ具合で前後させましょう。この程度のスピードなら石が跳ねても姿勢を立て直しやすく、万一の転倒でも被害を最小限に抑えられます。
大きな石や浮き砂を見つけたら、回避よりもスロットルをわずかに開けて前輪荷重を抜き、フロントタイヤが石の頂点を跳び越えるイメージで通過すると失速しづらくなります。
ブレーキ配分とライン選択のコツ
砂利道での減速はリアブレーキ主体が基本です。リアを先に踏みじわりと荷重を後輪側へ移してから、必要に応じてフロントを添えると、前輪が石に乗った瞬間のスリップを抑えられます。
ABS非装着車はリアを引きずる程度に当て、滑り出しの感触を足裏で探ると路面状況がつかみやすいでしょう。コーナーではアウトインアウトの基本ラインよりも、安全マージンを確保した「アウトミドルアウト」を意識します。イン側には排水溝や角ばった岩が隠れていることが多く、タイヤサイドをヒットするリスクが高いからです。直線が続く場所でも路面中央の拳大の石を避けるために不用意にハンドルを切るのではなく、ステップ荷重で車体を傾けながら滑らかにライン変更するとグリップを失いにくくなります。
長い下り坂ではエンジンブレーキをメインに使い、前後ブレーキの熱ダレを防ぎましょう。もしフロントが滑ってハンドルが取られたら、慌ててブレーキを握り込まず、スロットルを一瞬緩めて荷重を後輪へ移すと車体が自然と立ち直ります。走行後はホイールリムやブレーキローターに石はさみがないか点検し、タイヤの空気圧が適正か確認してから帰路に就くことが大切です。砂利道に慣れれば、バイク本来のバランス感覚と路面読みの楽しさが味わえます。正しい荷重コントロールと冷静な操作で、オフロードの入り口を安全に広げていきましょう。
