出没時間帯の傾向を読み取る
野生動物は薄明薄暮性が強く、日の出前と日没後の1〜2時間が最も路面に現れやすい時間帯です。特にシカやイノシシは気温が下がる早朝に水辺へ移動し、夕方は草地で採食を始めるため、郊外の県道や農道ではライトを点灯していても不意に姿が浮かび上がります。気温10℃以下の春先や秋口は行動範囲が広がり、繁殖期で警戒心が鈍るケースもあるので、走行ペースを日中より10〜15km/h落とすのが無難です。
道路脇の植生にも目を向けるとサインが見えます。草が食べられて高さが揃っていない場所や、泥の付いた足跡が連続している場所は通り道になっている可能性が高く、カーブの先で急に動物が道路を横断する確率が上がります。夕暮れ時、前方で赤いテールランプが急減速したら動物回避のブレーキかもしれません。後続車がいなければ早めに減速し、後続車がある場合はブレーキランプを強めに点灯させて自分が減速する意図を伝えましょう。
警戒装置と情報収集を組み合わせる
近年はバンパーに取り付ける超音波ホイッスルやハンドルバーエンドに装着する小型警笛など、走行風を利用して超音域の音を発し動物を遠ざける製品が市販されています。効果は絶対ではないものの、林道入口やガードレールに動物注意の黄色い標識がある区間では装着しておくと心理的余裕が生まれます。スマートフォンのツーリングアプリには、動物衝突多発地点をクラウド共有する機能が追加されつつあり、ルートを設定する際にチェックしておくとリスクの高い地点を把握できます。
林業関係者が設置した電気柵や青色LEDライトは動物回避目的の目印です。道路沿いで見かけたら活性が高い証拠なのでペースダウンを意識しましょう。夜間はハイビーム主体で走り、対向車が来たらロービームに切り替えるのが基本ですが、鹿の眼球はハイビームを反射しやすく、光に驚いて動きが読めなくなることもあります。対向車がいない直線で前方に光る点が見えたら、早めにパッシングを3回程度行い、警笛を短く鳴らしてこちらの存在を知らせると、動物が立ち止まる確率が上がり通過しやすくなります。
飛び出されたときの回避行動
動物が路面に飛び出した瞬間は、パニックブレーキより車体を直立させることを優先しましょう。ハンドルを切ったままフルブレーキを掛けるとフロントが簡単にロックし、転倒してしまう危険が高いからです。
まずクラッチは握らずスロットルを完全に戻し、フロント・リアの順に荷重移動を意識してブレーキを握ります。ABS非搭載車はリアが先に滑りやすいため、フロント六割・リア四割程度の入力で路面状況を確かめながら制動します。動物との距離が5mを切ったら、進路変更ではなく減速停止を選ぶ方が賢明です。
鹿やイノシシは進行方向を読みにくく、避けようとすると逆方向に跳ねてくる例が多いためです。もし接触が避けられずハンドルを切る場合は、視線を「空いているスペース」にしっかり送ると体が自然にそちらへ向かいます。接触後に停車できたらエンジンを止め、二次被害を防ぐためハザードを点けて後続車に注意喚起しつつ、動物が混乱している間は近づかないようにします。負傷した動物は攻撃的になることがあり、特にイノシシは牙で突進してくるので絶対に触れないでください。
通報は警察または地域の振興局へ行い、場所と動物種、車両損傷の有無を伝えます。保険申請には事故証明が必要になるため、スマートフォンで現場と動物の位置関係を撮影しておくと後の手続きがスムーズです。衝突がなかった場合でも、急ブレーキによりタイヤがフラットスポットを作ることがあるので、ガソリンスタンドで空気圧を再確認し、偏摩耗がないかチェックしてから再出発しましょう。野生動物との遭遇は完全に避けることはできませんが、時間帯とサインを読み取り、装置と情報を活用し、落ち着いた回避行動を取ることで、大きなリスクを小さく抑えることが可能です。
